Blog

2019/04/02

飲食事業を始めた経緯 8

農水省での仕事は、1〜2年毎に部署を異動しますので、多くの仕事を経験します。

 

 

自分も、入省後すぐに生産局総務課という農業生産の振興を担う部署に配属され、その後は競馬監督課、食肉鶏卵課、大臣官房政策課、食料産業局の知的産業課、再生可能エネルギーグループといった部署を経験しました。

 

 

特に大臣官房政策課では、農水省全体の政策の方針を定めてマネージする部署で、大臣の国会での所信表明演説の原案作成や、新大臣が就任した際の就任記者会見の原稿作成なども、自分の担当でした。

 

 

ちょうど、大臣の不祥事などによって、農林水産大臣が3ヶ月の間に3回変わったときは、その度に新大臣が農林水産行政に取り組む方針を表明する原稿を作成するのですが、大臣は替わっても農林水産行政の状況は大きく変わっていない中で、全く同じことを話してもらう訳にもいかず、違いを作るのに苦労しました。

 

 

ちなみに、大臣の所信表明などの原稿は、前例や現在の省の政策方針の現状をよく踏まえながら原案を作成し、企画官、上席、政策課長などの所属部署の上司の厳しいチェックを受けた上で、省内全体に協議をかけて修正に関するやりとりを繰り返し、更に総務課長、総括審議官、官房長といった幹部に説明をした後に、最後に大臣に課長と共に説明を行います。

 

 

既にそれだけのチェックを得て練られた文章のため、大臣からは、政策の細かい中身に関する指摘はそれほどありませんが、幾つかの宿題をもらって修正を行うことはあります。

 

 

国民に分かり易く、魅力的な文章にしたいと考えるのですが、どうしても事実を網羅して正確に伝えようとし、更に多くの関係者の協議を経ると、官僚が作成した真面目な文章になってしまいます。最後は、その原稿を使ってメリハリのある話をするのは、大臣の力量次第なのだと思います。

 

 

話がそれましたが、政策課では、食料自給率が4割を切り、農業者も高齢化・減少して、耕作放棄地も増加している状況を変えて、日本の農業を活性化するためには、どのような政策が必要かを検討して、実施するということが、最大の仕事でした。

 

 

日本の農業を活性化するためには、農業を儲かる魅力的な産業にする必要があり、そのためには農業者の所得が増えるような政策が必要です。

 

 

政策の内容としては、大規模化によって経営の効率化を図ることを支援したり、六次産業化によって商品に付加価値をつけて所得を増やす取組を支援すること、海外への輸出によって販売先を拡大することなどがあります。

 

 

農水省は、既にそういった取組を実施している成功例を取り上げて、そのような取組がより普及していくための政策を打ち出すのですが、役所はあくまで事業者の取組を支援する立場で、日本の農業が活性化するかどうかは、事業者の取組にかかっています。

 

 

自分は、農水省での仕事を行う中で、事業者の取組を支援する立場よりも、いずれ自分の創意工夫を発揮する事業者側の立場で働きたいとの気持ちが芽生えました。

 

 

そうした中で、農水省から外務省に出向し、外務省では2010年に日本で開催したAPEC(アジア太平洋経済協力)の首脳会議、大臣会合、各種会議の準備の担当となりました。

 

 

(続く)

2019/03/27

飲食事業を始めた経緯 7(農水省での食生活)

研修から戻ってからは、再び農林水産省で毎日、深夜過ぎまで働く忙しい日々を過ごしていました。

 

 

農林水産省には、他の霞ヶ関の省庁(やおそらく民間の企業でも同じでしょうが)と同じように、仕事にとても厳しい上司や先輩がたくさんいましたので、仕事に関する千本ノックを毎日受けているような状況でした。

 

 

必死になってリサーチをして、前例を調べて、一生懸命考えて文章を作成して、先輩に怒られ、また直した文章を作成して、また怒られ、また直すといったことの繰り返しです。

 

 

それだけ鍛えられる環境の中でついていけば、どんな人でも成長できます。そんな細かいところまで気にしなければいけないのかと、圧倒されたことが、何度も(何百回も)ありますが、やはり今となってはそのような指導を受けられたのは貴重であったと考えています。

 

 

アップル創始者のスティーブ・ジョブズも、「神は細部に宿る」と言って細かいところまで妥協をしない物作りを徹底した結果、人々から評価される製品が出来上がったそうです。

 

 

また、農林水産省のよさとして、チームワークで和気あいあいと仕事をする文化があったこともあげられます。遅くまで仕事をしていても、自分だけはなく、他の人も頑張っていたので、前向きな気持ちで仕事に取り組めました。

 

 

一方で、農水省で働いていたときの食生活は、あまりよくありませんでした。

 

 

睡眠時間は毎日数時間でしたので、朝はゆっくり家で食事をとる余裕がなく、毎日コンビニのサンドイッチ。お昼は少し余裕があるときは食堂のご飯を食べれるものの、夜はまたコンビニです。

 

 

農林水産省の一番の使命は、国民が安全な食料を得られるようにすることです。言わば、日本の食を司る省庁なのですが、そこで働く職員が、毎日の食事を大事にしないでよいのかと、よく同僚と話をしていました。

 

 

コンビニのサンドイッチやお弁当には、食中毒防止のための防腐剤を始めとする大量の添加物が入っています。

 

 

防腐剤や添加物は、免疫機能を維持したり、カラダのバランスを整えるのに必要な腸内の善玉菌を殺してしまいますので、そうした食生活を続けていると、すぐに病気にならなくても、疲れやすいカラダになってしまいます。

 

 

これは、どこの職場でも同じだと思いますが、忙しいとどうしても食生活が乱れてしまいがちです。

 

 

でも、長期的に仕事でよい成果を出すためには、忙しいときでも食事を大事にする働き方が、これから広まるとよいと思っています。

 

(続く)

2019/03/20

飲食事業を始めた経緯 6(農水省での研修の続き)

農林水産省での農村派遣研修について、もう少し書きたいと思います。

 

派遣先については、自分で希望を出せますので、同僚の職員もそれぞれ日本各地の農家に研修に行きました。

 

 

せっかくの研修の機会ですので、普段体験できない場所に行きたいと思っている人が多く、沖縄の離島や、北海道などが人気でした。

 

 

勿論、単に沖縄や北海道に行きたいなどと言っても希望は通りませんので、もっともらしい理由をつけます。沖縄であれば、過疎の離島地域における農業振興を通じた地域活性化について考察したいということや、北海道であれば、大規模経営農業について学びたいなどです。

 

 

研修先に有機農家を選んだ人は自分の知る限り当時はほとんどいませんでしたが、私と同じ部署の同期職員がちょうど同じく、有機農業を学びたいと希望を出しました。

 

 

彼も有機農家への派遣が無事に決まったのですが、よく聞いてみると、有機栽培を行っているタバコ農家だったようです。彼はタバコが大嫌いでしたので、ショックを受けていました。

 

 

自分や同じ部署の同期職員の彼のように、研修で有機農家に行ったものからすると、なぜ農水省はもっと有機農業を振興しないんだろうと思いましたし、そのような質問を受けることも多くありました。

 

 

それに対する答えの一つとしては、関心を持っている人が少ないからだと思います。

 

 

農水省の職員であれば、ほぼ全員が日本の農業を活性化させるということを目指していますし、環境保全型農業や循環型農業を推進する必要性についても、大半の職員が認めていると思います。

 

 

ただ、有機農業を振興するべきかと問われたときに、積極的に賛成する人はあまり多くいないと思います。

 

 

日本の農業の一番の課題は、農業者の所得を上げて農業を魅力的な産業にすることですので、そのためには、機械化の推進や大規模化、六次産業化などによる効率的な経営を目指すことが重要です。安全性が認められている最小限の農薬を使った方が、労働時間の短縮になりますし、そもそも有機農業は現状では圧倒的にコストがかかるのに、それに見合った高いお金を払って有機作物を買いたいという市場も大きくありません。

 

 

ですので、儲からない有機農業を振興する訳にはいかないという考え方は、ある意味当然だと思います。

 

 

どの農家も、国の定めた農薬の使用基準などに従って、安全な作物を栽培しており、しかも毎日大変な作業を行っています。そうした中で、経済的な利益を見込めず、技術的にもとてもハードルが高い有機農業に切り替えるべきだとは、言えることではありません。

 

 

有機農業を振興すべきと思うか、有機野菜を食べたいと思うかどうかは、個々の人の価値観によるべきものですので、行政が旗を振って大々的に取り組むのは、(社会全体の価値観が変わらない限り)現状難しいのだと思います。

 

 

自分は価値観として、有機農業を振興したい、できるだけ有機作物が多く世の中に出回るようにしたいと思っています。それを実現するためには、例えばアメリカのように、オーガニック商品が売っているスーパーでの買い物が楽しくてワクワクすると思えるようになったり、有機農業を行って利益を出す農家さんが多くなったりするなど、オーガニックのマーケットを拡大することが、一番の道なのではと思います。

 

 

社会をよくするために行政が果たす役割はとても大きい一方で、民間の事業者の新たな取組によって市場を開拓することによって、社会が変わっていくということもあります。

 

 

(続く)


PAGE TOP